2012年 10月 24日
So
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"So"が14歳の僕に与えた衝撃を、うまく表現することはきっとできない。

当時は33回転のLPレコード、それも近所の You & I で借りてきたもの。
季節は秋だったか冬だったか、そのころの僕は思春期特有の難しい感情に加えて、子どもが向かい合うにはいささか
大きすぎる問題を抱えていて、まわりからは腫れ物を触られるように、それをどこか冷静に俯瞰している自分は
少し自己陶酔気味に暗い闇の淵に沈んでいた。

中学2年生になりちょうど「洋楽」に目覚めたころ。
ピーター・ガブリエルを知ったのは"Big Time"のビデオをベストヒットUSAで見たのがきっかけ。
なんの知識もないまま名前をメモし、翌日の放課後なけなしの小遣いを握りしめてレンタルレコード店に自転車を飛ばした。

家族の寝静まった深夜、黒い盤面からそっと埃をふき取り、針を落とす。
46分のカセットテープにダビングするかを決めるのは、まず一度聴いてから。

NS-1000のウーハーから流れる重いドラムとベースのサウンド、ピーガブのハスキーだけど透き通ったボーカル。
"Red Rain"から"Sledgehammer"、そして"Don't Give Up"へ。
僕はいつの間にか、畳の上に置かれた左右のスピーカーの真ん中にじっと正座していた。
音楽を聴いて涙を流したのはこのときが初めてだったと思う。
その感情の動きはなんだったのか、今となってはよくわからない。
ただ深く、そのときの僕の心の中に入り込んで来たのだと思う。

音楽はレコードからCDへと移り変わり、最初の"So"を自分で買ったのはいつだったのか実はよく覚えていない。
学生時代バイトをしはじめ、きっと少しお金に余裕が出てきたころだったんだと思う。
社会人になって上京し、渋谷のHMV(まだセンター街の奥にあった)に通い始めたころ、真っ先に足を運んだのは
やはりRock&PopsのPのコーナーだった。
懐かしいジャケットを手に取った。
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それからはリマスターやSACDが出るたびにその音の変化を確認してきた。
だけど僕にとっての一番のSoは、やっぱりB面の最後が"We Do What We're Told"で終わるLPレコード。
(LPの収録時間46分という制約があったため、ピーガブは「仕方なく」B面ラストをこの曲にした。2003年のリマスターでは、
当初の構想通りB面1曲目だった"In Your Eyes"がラストを飾ることになるのだけど、僕はいつまでたってもその曲順に
違和感を覚えてしまうのでした)
今となってはレコードのパチパチというノイズを聴くこともないのだけれど。



今年はその"So"がリリースされて25周年だそうです。
最近のピーガブ御大はセルフカバーだったりリイシューだったり「焼き直しビジネス」が若干目につくけれど、それでも
やっぱりこのアニバーサリーディスクを買わないわけにはいかないでしょう。
毎度のリマスタリングも気になりますが、今回の個人的な目玉は1987年収録の2枚のライブ盤。
会場が僕の大好きな街アテネというところになにか奇妙な縁を感じます。

この先どんなにたくさんの音楽を耳にしても、Soを超えるアルバムに出会うことはありません。
それは絶対的な音楽の良し悪しではなく、僕の人生のある場所にすでに固定されたものだから。
そして今日もまた、NS-1000から流れる"So"を聴いているのです。

by alfa_driver1972 | 2012-10-24 02:13 | foto+diary | Comments(8)
Commented by sa55z at 2012-10-24 05:28
元祖ジェネシスですね。ジェネシスはあの方に乗っ取られたような形で・・・。
しかし、ガブリエルは別な方向で進化していきましたね。
もう25年ですか。という事は昭和63年??
Commented by しろ at 2012-10-24 10:34 x
ボクもピーガブに出会ったのはベストヒットUSA。
Sledgehammer のビデオクリップ(死語?)を見て、へええ、と。

で、Soを聴いて

 「がああああん!」

って、なりました。
LPも買った、CDも2枚買った。
LPは確か、父親がどっかに隠してるw

これだけは譲れない1枚。
車(カセット、CDチェンジャー、MD、メディア問わず)から絶やした事はない。
もちろんiPodから消したこともない。

そう思ってるのはHIDEさんだけじゃないぞ!
(って、なんか妬けちゃったのでコメントしてみたの^^;;;)

ちなみに、最初期盤はLPと同じ並びだったんですよ・・・
Commented by alfa_driver1972 at 2012-10-24 11:25
>sa55zさん
確かに、元祖ジェネシスですね。
そのあと2代目のフィルおじさんに乗っ取られるわけです(笑)。
そういったことを知ったのもあとからでした。

1986年発売の25周年らしくて、なんか計算合わない気もしますが(笑)。
昭和61年みたいですね。

HIDE
Commented by alfa_driver1972 at 2012-10-24 11:40
>しろさん
熱い、熱いです(笑)。
お互い譲れないですよね、ホント。

僕は微妙に時期がずれていてSledgehammerのビデオクリップはあとから見ました。
Big Timeもそうだけど、アップテンポなアルバムを期待してたんですよね。
それが実際にSoを聴いてみると、当時中学生の自分からはずいぶん大人で暗いアルバムに感じて、
だけど心の奥に響いてくるリズム(トニー・レビンのベース!)にやられた記憶があります。
レコードで聴いておいてよかったなと思える一枚。

僕が最初に買ったCDもLPも同じ並び+This is the pictureでした。
(話がややこしくなるから記事では端折っちゃった(笑))
やっぱりこっちの曲順のほうがしっくりくるんですよねぇ。
思い出って強い(笑)。

今回買ったのは25th Anniversary Editionの3CD set。
今LP付きのボックスセットを追加で買おうか真剣に悩み中...

HIDE
Commented by pingo21 at 2012-10-31 17:18
ソロになったガブリエルはⅢからで、慌ててⅠⅡと買い込み、Ⅳ~ライブの流れです。
期待したBirdyでコケて、Soで、またまたスゲー!ってなったのを覚えています。
確かにSoの完成度は高いですね、音も良いし。

バースへ行った時は車内でSolsbury Hillを聴きいて感動したりw 以後、30cmイングル盤多数、彼のブロデュースしたアフリカ物とか、
ドイツ語盤のⅢとか発禁になったUSなんかも買ってました。
でも近年はUPでストップしてます。久しぶりにSoを聴いてます。
Commented by alfa_driver1972 at 2012-10-31 20:51
>pingoさん
おー、ここにも熱い方がいらっしゃいました(笑)。
僕はオフィシャル盤で手一杯ですよ。

Birdyは(後聴きでしたが)たしかにいまひとつ??でしたね。
Soも昔からのピーガブファンからすると「軽い」と言われるようですが、入り口にしてはいい作品だったと思います。
当時にしては音もずば抜けて良かったですね。

UPも好きですねぇ。
あと最近のものでは(サントラですが)OVOも好きでした。
Soの25周年盤は音もなかなかいいですよ。

HIDE
Commented by blogyokohama at 2012-11-02 12:37
こんにちは。
時々ROMで拝見しておりましたが、思わず反応して長文コメント
失礼致します。
RedRainで始まり、We Do What We're Toldで終わる、その
CDをMetalテープ(笑)に落として聴いておりました。あの曲順は大事ですね。NS-1000というのも懐かしい名前です。
アニバーサリーディスクは知らなかったのですが、買って隙間
時間に聴いてみようと思います。
中高生の頃の何ともいえない気分と共に曲を思い起こしました。
記憶を喚起して下さり、ありがとうございました。
Commented by alfa_driver1972 at 2012-11-02 13:28
>blogyokohamaさん
こんにちは。
ときどき見ていただけていたとは、光栄です。
こちらももちろんよく拝見させていただいております。

やはりあの曲順ですよね。
In Your EyesバージョンだとThis is the Pictureがすごく浮いちゃって。
記事の通り最初はLPだったのですが、すぐにCDを借り直して(まだ買ってない(笑))CDプレーヤーを
持っていたお医者の友人宅でテープに落としました。
もちろんメタル(笑)、世代が近いですね。
NS-1000はまだ現役です。

25周年盤、前のコメントにも書きましたがいい音してます。
3CDのライブ盤もいい雰囲気でオススメです。

HIDE


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