2013年 07月 19日
記録/記憶
c0053091_210252.jpg
アサヒカメラの連載『タカの実験室 写真は記憶を写せるか(鷹野隆大)』を興味深く読んでいる。
まだ連載は続いているのだけど、筆者は早々に「記憶と写真は別物だ」という結論を導き出している。
これには僕も同感で、写真は、というより、視覚は、記憶を導かないというのが僕の昔からの持論。
c0053091_2102538.jpg
アルバムの中の子どものころの写真を見てみる。
物心ついてないときのものはさておき、記憶が残っているはずの中学生のときの写真。
3年間通った中学校の正門の前、びっくりするくらい若い母とブカブカの制服を着た丸坊主の僕。
写しこんだ日付から、それが入学式のときの写真だということはわかる。
だけど、写ってないまわりの光景や、このときいったいどんな気持ちだったのか、暑かったのか寒かったのか、これがさっぱり思い出せない。
(僕の記憶力が悪いだけなのかもしれないけど)
c0053091_21026100.jpg
対して、当時聴いていた音楽を今聴いてみる。
夏の入り口の頃に聴いていたもの。
歯切れのいいゲートリバーブのドラムサウンド(フィル・コリンズだ)、やたらカンカンいってるシンセの音(ホイットニー・ヒューストンの
「すてきな Somebody」)。
その音を耳にした瞬間、肌にまとわりつく「中学生の夏」を思い出すことができる。

雨がアスファルトを濡らす匂い、花火の煙の匂い。
境内から聞こえる夏祭りの鐘の音、開け放った窓から聞こえてくる蛙の鳴き声。
嗅覚、聴覚からの不意打ちのトリガーは、当時の情景をさまざまと心のなかに浮かび上がらせてくる。
こちらのほうがより「記憶」に近い、と思うのだ。
c0053091_2102755.jpg
写真を見た時に感じる懐かしさ、それだって立派な記憶なんだと思う。
だけどそれは、どこか表面的な記憶、どちらかというと「記録」に近いのではないかと考える。
視覚以外のものから呼び起こされる、もっと生々しく、思わずあっと声を出してしまいたくなるあの感覚とはあきらかに異なる。
c0053091_2102611.jpg
今回並べた写真は、はじめて買ったデジタル一眼カメラの記念すべきファーストショットだったり、昔の旅行や帰省のときの
写真をフィルムスキャンしたものなど、どれもかなり時間の経っているものばかり。
保存された日付を見れば「ああ、あのとき」というのはわかる。
だけどなんだろう、その写真を見ても心を揺さぶられるものがないのだ(写真がイマイチなんだろうというのはさておき)。
それはこのブログ(もう8年続いているんだなあ)の昔の写真を見なおしてみてもしかり。
キャプションとともに当時を思い出すことはできても、懐かしさというものはあまりない気がする。
c0053091_210245.jpg
写真はあまりに断片的、瞬間的に鮮明すぎるのかもしれない。
音や匂いはもっとあいまいで連続的だ。
あいまいな分、想像という力が当時の記憶を呼び起こしている(しばしば美化とともに)のかもしれない。

記憶の定義がそもそも違うのかもしれないけど、写真は(視覚は)、その他感覚が呼び起こすことのできる種類の記憶は
持ちあわせていない。
僕の結論はやはり「写真は記憶を写せない」、ということになる。

写真ってなんなんだろう、撮影という行為とはなんなんだろう。
記憶は歳とともに増えていき、かえってその疑問は深まる一方なのだ。

by alfa_driver1972 | 2013-07-19 23:31 | foto+diary | Comments(13)
Commented by sasa920 at 2013-07-21 07:55
おはようございます(^^
写真は記録・・・その時 その瞬間
自分がここにいたという事を記録していきたいと 
基本そんな感じです(^^; 自分病気してるので 元気なうちに
というのもあるのですが・・・

記憶としては 音楽だったり手紙だったり匂いや料理もそうですが 確かにそちらの方が鮮明に思い起こせますね(^^

ちなみに フィルコリンズもホイットニーも
学生の頃によく聞きましたヨ(^^b  
Commented by alfa_driver1972 at 2013-07-22 00:56
>sasa920さん
小難しい話にコメントありがとうございます。
やはり写真は「記録」なんでしょうね。
記憶にしては少々鮮明すぎるのかなと思います。
なのにあいまいなはずの嗅覚や聴覚からの記憶のほうが鮮明に思い出されるという不思議...

フィル・コリンズとホイットニーを学生時代ということは世代がお近いですね(笑)。
お身体大切に、たくさん写真撮ってくださいね。

HIDE
Commented by view-finder at 2013-07-22 16:42
プロの物書きとしてもやっていけると思うような素晴らしいコラムですね。
このお考えについては僕も全面的に同意です。
大昔の、子どもの頃のことは、写真があるから「なんとなく覚えていく気になっているだけ」
ということが非常に多いです。
その写真を見てみても、もし写真がなければ、思い出さない(出せない)と
思うような場面が多いですね。

写真などなくても、しっかりと記憶されている思い出や、その時の気持ちって
あるんですよね。
音楽が記憶を呼び覚ますこと、僕も多々経験があります。
とくに子どもの頃よく見ていたアニメの主題歌やエンディングテーマ・・・
直接聴かなくても頭の中でその曲を思い出したり歌ったりするだけで
その当時の記憶が強烈によみがえるんです。
たとえば、親に怒られたこととか、あることがあって学校に行きたくないと思った気持ちとか(笑)

「すてきなSomebody」を今歌ってみたところ(頭の中で)、
ベストヒットUSAを毎週夢中になっていた厨房時代を思い出しました(笑)
小林克也の顔とか、当時よく見ていた映画などが思い出されます。
Commented by alfa_driver1972 at 2013-07-22 18:07
>view-finderさん
いやはや、元がホントのプロの物書きの方からのインスピレーションなので...
けどうれしいです(笑)。

おそらくですが、昔のことって大半は忘れてしまっているんだと思います。
そうじゃないと生きていけないと思いますし(笑)。
例外的に写真が残っているワンシーンや、感情が大きく動いたときの記憶だけが、頭のなかに残っているんだろうなって。
写真は大して印象的でもないシーンだとしても、手元に残ってしまっている。
それがちょっとやっかいかつおせっかいなんでしょう(笑)。
逆に印象的な出来事は、そのときの空気や音とともに脳みその中にしっかり格納されている気がします。
それが逆に音や匂いによって引き出しが開かれると。

ベストヒットUSAは情報源の少ない地方の中学生にとってはバイブル的番組でした。
あとは週刊誌のFMステーションでしたね。
懐かしい思い出です。

HIDE
Commented by view-finder at 2013-07-23 10:09
FMステーション!!なつかしいですねぇ(笑)
僕も毎週のように買ってました。(隔週でしたっけ?)FMファンもたまに買ってた記憶があります。
FMステーションはカセットのレーベルが付録でしたよね?
あれを使ったこともありました。
レタリングをしたり・・・今じゃ考えられないことですね。
FMのエアチェックなんて今は誰もしないでしょうね。エアチェックという言葉自体”死語”でしょうか(笑)

ベストヒットUSAは本当にバイブル的な番組でしたね。
「This week's No.1!」という小林克也の声やしゃべり方など、
カンペキに覚えております。
Commented by alfa_driver1972 at 2013-07-23 14:27
>view-finderさん
鈴木英人の表紙、思い出すと懐かしいですよねえ。
そうそう、週刊じゃなくて隔週でした。本屋に行くのが楽しみだったなあ。
当時はDJもエアチェック組を気にかけてくれていて、きれいに曲の初めから終わりまでかけてくれたり。
すっかりおっさん組の会話ですね(笑)。

HIDE
Commented by view-finder at 2013-07-23 17:41
まったくですねw 平成生まれの人は理解できないでしょうね!
カセットテープは絶滅したと思っていたんですが、ビッ○カメラとかに
今でも普通に売ってるんですよね。去年売り場で発見して驚きました。
当時はエアチェックして気に入った曲のレコードを買ったりしてました。

ちなみに、フィル・コリンズといえばボーカリストのイメージが強い人が多いと思いますが、
もともとドラマーなんですよね。
僕もアマチュア・ドラマーなのですが、フィル・コリンズはドラマーとしても
素晴らしくてものすごいテクニシャンですね。
中学生の頃ヒットした Invisible Touch (Genesis)もよく覚えています。
Commented by alfa_driver1972 at 2013-07-23 18:35
>view-finderさん
カセットテープは今でも高齢の方の需要が根強いそうです。
当時はエアチェックだったりレンタルレコードだったりで、カセットテープはよく使ってましたよね。ちなみに僕はTDK派でした。

僕もフィル・コリンズの入り口はinvisible touchでした。
そこからピーター・ガブリエルを知り(Soにハマりました)、昔のジェネシスを知り、ドラマーとしてのフィル・コリンズを知った流れです。
僕の80sサウンドは、結局プロデューサーの/エンジニアのヒュー・パジャムに行き着くんですよ。
ポリス、スティング、XTCなどなどなど...

音楽話はつきませんね(笑)。

HIDE
Commented by view-finder at 2013-07-24 10:45
本当に話は尽きませんね(笑)
ヒュー・パジャム・・・名前は知っていましたが、そこまで偉大なプロデューサーだったのですね。
ピーター・ガブリエルを知ったきっかけは、やはりジェネシスでしたか。
Soは歴史に残る名作ですよね。たしか3枚くらいお持ちなんですよね?(笑)
SoもInvisible Touchと同じ頃に出た作品だったと記憶しています。
80年代の音楽は当時から素晴らしいなと思ってましたが、今聴いてもそう思います。

カセットテープを今でも使っている高齢者がいるんですね。
もちろん需要があるからこそ売っているのでしょうね。
そういう僕もいまだにカセットデッキは家にありますがw
(AKAI GX-R60)
Commented by alfa_driver1972 at 2013-07-24 17:14
>view-finderさん
Soは4枚もってます(笑)。
Invisible Touchと同じ86年で、お互いシングルカットがチャート1位をとり合ってましたね。
80sは自分がいちばん音楽を聴いていた時代だったこともあって、それこそ思い出の引き出しだらけです。

AKAIのデッキをお使いだったんですね。
僕は手が届かなくてTEACでした。
AKAIとNakamichiは憧れでしたねえ。

HIDE
Commented by view-finder at 2013-07-24 17:46
4枚!!それはスゴイですね!
かなりの筋金入りですね。ここまでのファンがいるピーター・ガブリエルは幸せ者ですね(笑)
思い出の引き出しだらけ・・・まさに僕もそのとおりです。
本当によく聴いていました。オーディオにもリキを入れてましたね。
HIDEさんは年代物のスピーカーを今でもお使いのようですが、
僕は25年くらい前に買ったサンスイのスピーカーを今年手放してしまいました。
最近は自宅でゆっくり音楽を聴くことがあまりなくなって、
主に車で聴くことが多くなりました。
年を取ったらまた昔を思い出して単品コンポを集めたりするかもしれません(笑)
Commented by alfa_driver1972 at 2013-07-25 00:54
>view-finderさん
スゴイというか、マーケティングにすっかり乗せられてしまっているというか(笑)。

ブログやSNSでつながる方はほぼ例外なくオーディオ、カメラ、音楽(と飛行機)という共通点があるようです。
view-finderさんも例外ではありませんでしたね(笑)。
オーディオは環境を考えると難しいですよねえ。
僕も30年もののYAMAHAをいまでも使ってますが、鳴らすのは月に一回もあるかどうか。
ただその時間はやはりゆったりできるというか、いいものです。
オーディオはなくなるものじゃないと思うので、また再開できるといいですね。

HIDE
Commented by view-finder at 2013-07-25 17:16
30年ですか!!それもまたスゴイ!
いやぁ、そこまで愛用してもらえたらスピーカーも幸せものですよ(笑)
なんだか僕も手放したのがもったいなかったかな・・・という気がしてきました。
アンプもダメになってたので一緒に処分しました。
どんなに良いスピーカーを使っても、良いアンプを使わないと本来の音は出ないですよね。
オーディオは凝りだすとキリがないところがありますね(笑)
オーディオに限ったことではないですが。
やはり、いつかまたオーディオを集めたいです。


<< Looking Back at...      7月の夕方 >>