2007年 05月 17日
Old soldiers never die - フレクトゴン修理
まだまだ去ってもらっては困る我が家のエースレンズ、Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.4。
この世に生を受けて、おそらく30年近くが経過している東独製光学兵器、最近なんだか調子が悪いのです。
絞りが動いたり動かなかったりとかなり不安定な状態。

フレクトゴンの絞りには一つアキレス腱があって、絞り羽根と絞り環をリンクしているプラスチックの部品の
強度が弱く、以前そこが「断裂」してしまったことがあります。
なんとか応急処置を施し難を逃れたのですが、今回はそのときとは症状が異なります。
レンズに衝撃を与えると絞り羽根が急に復活したり、レンズを上に向けると動かなくなったり。
(ちなみにプラスチックのリンクが断裂するとぜんぜん動かなくなります)

どうやらこれは「絞り羽根の粘り」のようです。
古いレンズによくある症状で、レンズ内部のグリスなどの成分が劣化し、絞り羽根の動きが固くなってしまうのです。
軽症なうちは絞りをグリグリと動かしているうちに自然治癒することもあるのですが、どうやら今回は重症な
ようで、しばらく直ったと思っていても、数日経つとまた元通り。
はて弱った、これはどうしたものか... 

もう1本? とか、FA35? とか一瞬頭をよぎりますが、はたと考え直します。
*istDsを購入直後に手に入れたこのゴンちゃん、当ブログでの「ゴチレンズ」としての立場を早々に築き上げ、
その後数多くのフォロワーを生み出すこととなる、強烈な「ウイルス」とまで恐れられた圧倒的な感染力(かなり大げさ)。
あこがれのCarl Zeissレンズのすばらしさを教えてくれたコイツを、そう簡単に見捨てるわけにはいきますまい...

「よし」と一人覚悟を決めました。
初の分解清掃に挑戦です。
待ってろフレクトゴン、開放のときは近いぞ。

すっかり前置きが長くなりましたが(スイマセン)、さっそく分解にとりかかります。
c0053091_1602916.jpg
まずマウント面の3本のネジをはずします。
c0053091_1623576.jpg
すると、絞り環の部分がユニットごと取り外せます。
真ん中上部に見える柱状の部品が、絞り環と絞りを繋ぐリンク。
写真には写ってませんが、このリンクの付け根の強度が弱くて、一度折れてしまいました。
絞り環の操作はくれぐれも優しく、端から端まで強く押し当てるような操作は慎みましょうね。

なお、最初の写真の3本以外の2本のネジをはずすとこの絞り環ユニットをバラすことができますが、絞り環と
Auto/Manual切替レバーにとても小さなボールベアリングが仕込んであります。
こいつがかなりのクセモノで、はめにくい上に無くしやすいのでくれぐれもご注意を。
リンク部の修理をしようとするとこの作業をしなくてはならないのですが、あまりやりたくないです...
c0053091_1617445.jpg
絞り環をはずしたレンズはこのようになっています。
次に赤丸で囲んだネジ3本(+レンズ先端部1本 詳細は後述)をはずします。
(2008/7/13追記:もう一本レンズ先端部にあるネジを外す必要があります。下に写真を追加しておきますので
参考にしてください)
c0053091_122405.jpg


c0053091_16192947.jpg
するとこのようにレンズは3つのパーツに分割されます。
真ん中のパーツに絞り羽根が入っていますので、さらに分解を進めます。
c0053091_16205922.jpg
前玉ユニットと後玉ユニットはねじ込まれているだけなので、簡単に外すことができます。
これで絞り羽根に直接アクセスできるようになります。
c0053091_16255466.jpg
ここまでばらせました。
意外と単純な、分解、組み立てのしやすい構造にビックリです。
各レンズユニットもねじ込みで固定されているだけなので、簡単にレンズ単位に分解可能です。
(ただむやみにはばらさない方がいいでしょう)
c0053091_16231154.jpg
こいつが問題の絞りユニット、想像以上に汚れてます... 長年の蓄積ですな。
もうここまできたら怖いものはありません、盛大にパーツクリーナーをぶっ掛けて綿棒やクロスでクリーンナップ
していきます。
ただし、羽根そのものはとっても薄くて弱いものなので、取り扱いはあくまでも慎重に。

ついでに各レンズもブロアで埃を吹き飛ばし、やわらかいクロスで乾拭き。
各パーツをよく乾燥させたあとに組み上げていきます。
構造上、ねじ込みやネジ締め込みのトルクのみで精度が出る仕組みなので、できるだけ均一に締め上げていきます。
本当はコリメーター(光軸調整装置)を使ってやる作業なのでしょうが、そんなものは当然持っていないので
感覚だけが頼りです... いいんかなこれで?
c0053091_1719129.jpg
ハイ、組みあがりました。
絞りの調子も絶好調で、チャキチャキといい感じで動きます。
テッテー的お掃除のおかげで中も外もキレイになって、なかなか気分いいですね。

そしてあらためて気づく、このコーティングの濃さ...
これがゴンちゃんの濃密な描写のミナモトなんでしょうねぇ。

あとは実際に撮影してみて、光軸がずれてないかどうか。
いつものようにちょっと絞って(F4くらい)、バウンスで外部フラッシュON... カシャリ。
c0053091_172719100.jpg
c0053091_17131725.jpg

見る限り大丈夫なようですね。
ピントの合った場所の切れ味、やさしいボケ味、健在であります。

このレンズは当然中古で手に入れたものなのですが、僕の手元にくるまでどんな旅をしてきたんでしょうね。
日本以外の国で活躍してたかもしれないし、世界中を飛び回ってたかもしれない。
いろんなカメラ、いろんな撮り手にお供して、その茶色い目でなにを見てきたんでしょう。
そう考えるとレンズって、なにか不思議な「物霊」が宿っていそうで、よりキレイなものを見せてあげなきゃなんて
考えてしまいます。
きっとコイツはお腹がペコペコでしょう...

ある種無謀な賭けでしたが、なんとか結果オーライです。
ただアキレス腱である絞りのリンクパーツは未対策、軽く脱臼したままなんですよねぇ...
このパーツだけなんて入手できないし、OLDレンズはこういうときはちょっと困ってしまいます。
というわけで、この長い記事を最後まで読んでくださった奇特な方で、さらにフレクトゴンのジャンクをもっているというとっても奇特な方、
いらっしゃったら適価にてお譲りください...


by alfa_driver1972 | 2007-05-17 19:00 | PENTAX *ist Ds | Comments(28)
Commented by monbe_ex at 2007-05-17 20:01
この記事は永久保存版ですね!!
ゴンちゃん持ちとしては心強い。

安い(1000円〜2000円)ジャンクレンズを買って、レンズの分解・組立に慣れることにします。
Commented by nobu9n730202 at 2007-05-17 22:24
ボクも以前このレンズを瞬間的に保有してました。その際に一度
無限遠の調整のためヘリコイドまでバラシタ経験があります。
オート絞り用のリンクパーツが折れてしまっていたので、接着もしくは、かたどりして新規に作るか検討しましたが結果手放しました。
できればまた入手したいレンズですが最近高値ですね(^^;
Commented by ken-987 at 2007-05-17 22:38
自分のゴンちゃんの分解を見ているようで(笑)
私も怪我をしつつもこのレンズを使い続けています。

>もうここまできたら怖いものはありません

その通りですね!!
構造を知るのも勉強かと(爆)
Commented by すばる at 2007-05-17 23:01 x
うーん、凄いの一言につきますね!
私は琢磨君のマウントまでしか分解したことがありません。
あ、、Ds君のマウントも分解しましたが・・・(^^;;
なんでって?
アダプターが抜けなくなったからですw
Commented by bordeauxt-5 at 2007-05-17 23:54
オーバーホールお疲れさまでした~
案外構造はシンプルなんだなーなどと感じました。
ウチのゴンも調子が悪くなったらTRYしてみます。

間違ってもUSMなんか自分で分解したくありませんからね(笑)


ボルドー
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-18 13:13
>monbeさん
そう言っていただけるとうれしいです!
このレンズに限っていえば、思いのほか構造は単純でした。
安いタクマーあたりを買ってきて、分解、清掃とかするといい練習になりそうですね。

HIDE
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-18 13:16
>nobu9nさん
かなり本格的にばらされたんですね~。
ヘリコイドまでは今回手をつけませんでした。
元に戻せる自信がなくて...(笑)

プラスチックのパーツは鬼門ですね。
それもいかにも接着剤が効かなさそうな素材だったりして、困ったモンです。
もう1本かなぁと思ってオークションも見てみたんですが、ちょっと異常な値段ですね。
しばらく買えないなぁ。

HIDE
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-18 13:17
>kenちゃん
そういえば以前ばらされてましたね。
あらためて記事拝見しましたけど、その後調子はどうです?

ばらしてみて構造がわかって、ある種もう怖いものなしです。
あとはジャンクを待つのみ(笑)。

HIDE
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-18 13:18
>すばるさん
そうでしたか~、マウント外れずですか。
それはヒヤッとしそうですね。

実はタクマーくんを一本ももっていないので、一度入手してばらしてみたいですね。
うん? なんか目的が変ですか?(笑)

HIDE
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-18 13:20
>ボルドーさん
そうなんですよ、意外とアッセンブリー構造になってて、あるところまでの分解は簡単です。
精密ドライバー一本でできちゃいますもんね。

逆にいまどきの電気回路が入ったタイプは素人さんお断りですよね。
ぜったい元に戻せなくなるかと(笑)。

HIDE
Commented by alaska-v50 at 2007-05-18 13:28
先ずは、
>もう1本? とか、FA35? とか一瞬頭をよぎりますが
いいえ、よぎりません。駄目です。(爆
そんな事したら、HIDE社は多くの感染レンズ株主に事情説明が必要に
なりますよきっと。(笑
---
内容を食い入る様に見てしまいました!必ず役に立つ日が来る事でしょうし。
私も思わず保存版としてPCへ保存しておきました。

中古レンズの魅力って、仰るとおりの「物霊」が宿る程長い歴史と、
それを想像する「現時点」の持ち主が、悠久の時を感じる悦びってありますよね!

>さらにフレクトゴンのジャンクをもっているというとっても奇特な方

うーん・・ひょっとして宝くじを当てる確率の方が・・でしょうか?(爆
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-18 13:39
>FOXさん
うーん、レンズ選びにそんな制約があったとは...(笑)
あらたなレンズを買ってさらにウイルスの種類を増やす、とか、ダメ?(笑)

今回ふとこのゴンちゃんはどんなレンズ人生を歩んできたんだろうなぁ、と思ったんですよね。
いわゆる「目」なわけですから、きっと僕が見たことのない景色をたくさん見てるはずなんですよね。
そう考えるとちょっとした男のロマンですよね~。
女子どもにゃわかるめぇ... そりゃそうですな(笑)。

>ジャンクゴンちゃん
やっぱないですよねぇ。
パーツ自作するかなぁ。

HIDE
Commented by studio-hi at 2007-05-18 18:35
ゴンちゃんユーザーのバイブルですね♪
ペンタコンで絞りばねの作動不能を経験したましたが、クラシックレンズを使うことのリスクが、大幅に改善されました。
HIDEさんの努力に、ひたすら感謝ですm(_ _)m
Commented by alasken at 2007-05-19 19:39
最後まで熟読しました、奇特な人です。
レンズって、素人が分解できちゃうの!?というところに
驚きです。もちろん中身もみたことありませんし。。
この前、ニコンのレンズグリス交換で、諭吉一人が消え
ましたから。。Hideさんに見てもらえばよかったカモです。(涙)

人間が使うレンズ、でも人間よりも長生きして、いろんなものを
見ているところって、脳みそのさんぽちっくで惹かれますよ♪
Commented by sasabou147 at 2007-05-19 23:26
驚いちゃいますね。分解しるか?普通・・・
なんてHIDEさんには通じません。
えらい。そのチャレンジ精神。
そしてお見事!
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-20 22:05
>Hさん
絞りの粘りはクラシックレンズの宿命ですねぇ。
特に海外製は日本の気候とあわない部分もありそうです。

もちろん参考にしていただいて、けど分解のリスクは自己責任でおねがいしますね(笑)。

HIDE
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-20 22:09
>けんたろさん
奇特な方大歓迎です(笑)。
ここまで分解したのははじめてでしたが、予想以上にシンプルで簡単に精度を出せる構造でした。
壊してもいい覚悟で一本いじってみるのもいいかもしれませんよ。
逆に言うと、いいレンズはやっぱりプロにまかせて正解です!

ちょっと「脳みそのさんぽ」ぽかったですか? 光栄です!
レンズという目、とっても不思議ですね。

HIDE
Commented by alfa_driver1972 at 2007-05-20 22:11
>ささぼうさん
なにごともチャレンジ精神で... たんにケチなだけです、ハイ(笑)。
今回は結果オーライでしたが、素人修理のエジキになったものも数知れず。
昔はクラッシャーと家族から言われていました(笑)。

HIDE
Commented by hamaiphot at 2007-06-06 22:50
お久し振りです。
フレクトゴンを分解修理されたのを拝見して、
中々の腕前に関心しています。

私も同じレンズを所有していますので、
見入ってしまいました、有難う御座います。
Commented by alfa_driver1972 at 2007-06-07 12:45
>hamaiさん
ご無沙汰しております。
hamaiさんのブログはちょくちょく拝見させてもらっています。
相変わらずの美しい風景に癒されていますよ。

フレクトゴンというかこの時代のJenaのレンズは構造が単純のようですね。
私のような不器用者でもなんとかなりました(笑)。
とてもhamaiさんのようには、なかなか...

HIDE
Commented by rodagon at 2008-07-13 00:15 x
はじめまして。

同じ症状のレンズを入手して、ネットをさまよっているうちここにたどり着きました。
写真つきでとても参考になりました。

しかし、3枚目の写真から、4枚目の写真の状態になりません。
3つのネジをはずしても、ヘリコイドがついているユニットから
レンズユニットが外れません。
まっすぐは引き抜けないし、回転させようと思っても5度くらいしか
回転しないし…

外し方が悪いのでしょうか?
他のネジを外さないといけないのでしょうか?
よろしければ、アドバイスをお願いいたします。
Commented by alfa_driver1972 at 2008-07-13 01:35
>rodagonさん
はじめまして。
コメントありがとうございます。

今改めて分解してみたところなのですが... スイマセン、ひとつ外すべきネジの記載が漏れていました。
追加で写真をUpしておきましたので、参考にされてください。

光軸がずれる恐れもありますので、慎重に作業されてくださいね。
もし難しそうならプロへの依頼もご検討を...

HIDE
Commented by rodagon at 2008-07-13 02:52 x
わざわざ分解して、写真までアップしていただきありがとうございます。

まさにそのネジが外れない原因でした。
早速分解を進めると、ようやく絞りにアクセスできました。
丁寧に何度も無水アルコールで拭き、仕上げに鉛筆で
軽くなぞってあげたら、元気に絞り羽根が動くようになりました!

感謝感激でございます。

この前ユニット、3つの芋ネジで中心を出すような構造に
なっているんですね。
とりあえず、周囲からの距離が均等になるよう、細いものを
ユニットとその周辺に挟んで確認しました。

明日実写してみます。

ありがとうございました!
Commented by alfa_driver1972 at 2008-07-13 22:01
>rodagonさん
中途半端な情報で戸惑わせてしまい、失礼致しました。
無事分解できたとのこと、よかったですね。

前ユニットはそういう構造ですよね。
ずれてしまうとなかなかやっかいです。
昔と違ってデジカメだったら試写して調整がすぐできるので、ある程度まで追い込むのは
すぐできそうですけどね。

年代ものですがとってもいい写りをするレンズですので、たのしんでくださいね。

HIDE
Commented at 2009-08-02 15:12 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by alfa_driver1972 at 2009-08-02 19:56
>鍵コメさん
お役に立てたようでうれしいです。
リンク、問題ないですよ。

HIDE
Commented by RITA Aless at 2009-08-03 00:41 x
(リンク承認、ありがとうございます。
上記コメント、公開していただいて結構ですよ。)

さて、分解したフレクトゴンは落ち着きましたが、
これまた絞りが参っているもう一本は、そのうち分解します。
いいレンズですから、大事に使いたいものです。
Commented by alfa_driver1972 at 2009-08-03 22:51
>RITA Alessさん
すいません、Exciteってあとからコメントいじれないんですよ。
消すか残すかだけみたいでして。

フレクトゴン、いいレンズですよね。
最悪修理業者って手もありますよ。
お互い大事に使っていきましょう。

HIDE


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